AIの要約が「記載なし」と言うとき、何が起きているか

外部ページの内容をAIに要約させると、必要な情報だけが整理されて返ってきます。要約は情報を落とすことそのものが正常な機能であり、原文の分量よりも短くまとまっていること自体は問題ではありません。問題は、落ちた情報について、AIが「記載なし」「情報の欠落」と断定して返してくる場合があることです。

要約が情報を落とすのは正常、断定は別の話

要約の過程で特定の語句や情報に触れなかったこと自体は、要約という処理の性質上、避けられません。しかし、触れなかったことと、「元のページに存在しない」と断定することは、本来まったく別の話です。要約結果を受け取る側は、この2つを区別しないまま「記載なし」という言葉を受け取ってしまいます。

「無いと言われたので無い」と判断するリスク

「記載なし」という報告を受け取った側は、そこで確認作業を打ち切ってしまいがちです。複数の外部ページを短時間で確認する必要がある業務ほど、AIの要約結果をそのまま判断材料として採用しやすくなります。ここに、AIが実際には見落としているだけの情報を「存在しない」と扱ってしまうリスクが生まれます。

AIの誤りには2種類ある — 「足す」誤りと「消す」誤り

AIの出力に含まれる誤りは、大きく2つの方向に分けて整理できます。

  • 無いものを足す誤り: 実際には存在しない情報を、それらしく生成してしまう(いわゆる捏造・ハルシネーション)
  • あるものを落として「無い」と断定する誤り: 実際には存在する情報を要約の過程で落とし、その欠落を不存在として報告してしまう(欠落の不存在化)

前者は、生成された内容の裏取りをすれば比較的気づきやすい誤りです。存在しないはずの固有名詞や数字が出てくるため、他の情報源と照合すれば矛盾が見つかります。

後者はこれとは事情が異なります。要約は「情報を落とす」ことそのものが正常な機能なので、何かが落ちていること自体は異常ではありません。異常なのは、落ちた情報について「存在しない」と断定してしまう報告の仕方です。この誤りは、要約結果だけを読んでいる限り気づくことができません。元のページを見なければ、何が落ちたのかを知る手段がないからです。

本稿では、この「消す」方向の誤り——欠落の不存在化——だけを扱います。捏造への対策は別の設計が必要になるため、ここでは扱いません。

実例: 産地名が6回出現していたのに「記載なし」と報告された

2026年7月22日、relmeaの運用の中で、ある外部ページの内容をAIの要約ツールに読ませました。確認したかったのは、そのページに産地の記載があるかどうかでした。

返ってきた結果は、「産地の記載なし・抜粋のみ」というものでした。

保存してgrepしたら6回出てきた

この報告をそのまま採用せず、同じページを保存してから、産地名で文字列検索(grep)をかけました。結果は次の通りです。

  • 産地名の出現回数: 6回
  • ページの状態: 公式サイトのURLつきで、全文がそのまま転載されていた

要約は、情報を落としただけではありませんでした。落としたうえで、その欠落を「記載なし」という断定として返していました。もし要約結果だけを見て判断していたら、実際には6回も出現していた情報を、存在しないものとして扱ってしまうところでした。

この経験から決めた規約

この一件を受けて、外部ページの中身を扱うときの手順を変えました。要約を読んで結論を書くのではなく、次の順序に固定しています。

  1. 対象のページを保存する
  2. 確認したいキーワードで出現回数を数える
  3. 出現回数を実際に見てから結論を書く

要約は依然として使い続けています。最初の見当をつける手段としては有効です。変えたのは、「記載なし」という報告を最終結論として扱わない、という一点だけです。

AI要約の抜け漏れをどう確認するか — 保存してgrepで数える

AI要約の抜け漏れを防ぐ確認手順は、特別な技術を必要としません。ページを保存し、確認したい語句で文字列検索をかけ、出現回数を数える。これだけです。

なぜ「読んで判断する」ではなく「数える」なのか

要約結果を読んで、その内容が正しいかどうかを判断しようとすると、判断の材料自体がAIの出力に依存してしまいます。要約が情報を落としている場合、読み手はその落ちた情報の存在を知る手がかりを持ちません。

出現回数を数えるという手順は、この依存関係を断ち切ります。数える対象は、AIが加工した要約ではなく、保存した元のページそのものです。何回出現したかという事実は、AIの解釈を経由せずに確認できます。

手順を分解する

  • 確認したい外部ページを丸ごと保存する(要約や抜粋ではなく全文)
  • 確認したいキーワードを決める(産地名、社名、数値など、断定の根拠になる語句)
  • 保存したファイルに対して、そのキーワードの出現回数を数える
  • 0回であれば「記載なし」と結論づけてよい。1回以上であれば、AIの「記載なし」という報告は誤りだったことになる

「記載なし」という報告を再定義する

この手順を通すと、「記載なし」という言葉の扱い方が変わります。AIが返す「記載なし」は、確定した事実の報告ではなく、「この要約の中には含まれていなかった」という、要約側の限界の報告として扱うことになります。元のページに存在するかどうかは、別途確認しなければ分かりません。

この区別は、業務でAIの要約を判断材料に使う場面すべてに当てはまります。確認する対象が産地名であっても、仕様の記載であっても、条件の有無であっても、「記載なし」を受け取った時点では何も確定していない、という前提で扱う必要があります。

同じ構造は比較表にもある — 未検証を「無い」にしない

「記載なし」という誤った不存在の断定は、AIの要約に限った現象ではありません。作成者が内容を選んで整理するという工程を経たものであれば、同じ構造のリスクが生じます。

一例として、ベンダーが作成した競合比較表を確認したことがあります。表面上は整理された比較に見えましたが、実際に記号の数を数えると、自社側は「○」45件・「△」1件・「×」0件だったのに対し、比較相手側は「不明」が25件でした。比較対象の項目のうち、少なくない割合が実際には調査されていなかったことになります。

比較表を作成する側は、比較項目・重要度・調査の深さという3つの要素をすべて握っています。この構造上、作成者に有利な比較表になりやすいという性質があります。AIの要約と同じく、「まとめられた結果」をそのまま信じるのではなく、中身を数えて検証する必要がある対象です。

未検証の項目は、「無い」ことにして消してしまうのではなく、「不明」「未検証」とそのまま書くことが、この種の資料を扱ううえでの最低限の誠実さになります。

まとめ — 「無い」という報告だけを実測に置き換える

AIの要約は、情報を整理して短くするという点で、引き続き有効な道具です。今回変えたのは、要約の使い方そのものではなく、「記載なし」「情報の欠落」という報告を受け取ったときの扱い方です。

AIの誤りには、無いものを足す誤りと、あるものを落として無いと断定する誤りの2種類があります。後者は、要約結果だけを読んでいる限り気づくことができません。

対策は単純です。外部ページの中身について結論を出す前に、ページを保存し、確認したいキーワードの出現回数を数える。この一手順を挟むだけで、2026年7月22日に起きたような、6回出現していた情報を「記載なし」として見落とす事態を防ぐことができます。「無い」という報告は、実測してから初めて結論にする。これを、AI要約の抜け漏れに向き合うときの基本の手順にしています。