新規商品が上位に出にくいのは、仕組みの問題です

新しく登録した商品の売上が伸び悩むと、多くの場合「商品ページの作り込みが甘いのではないか」「価格が高いのではないか」といった商品側の要因から見直しが始まります。もちろんページの情報量や価格設定は重要な要素ですが、それ以前に見落とされがちな要因があります。それは、モールの検索結果が販売実績のない商品を上位に表示しにくい構造を持っている、という点です。

各モールが公表している検索表示に関わる要素としては、販売実績やレビューの件数、商品情報の充実度、更新頻度などが挙げられます。ただし、これらの要素をどのような計算式で組み合わせて順位を決めているかという内部仕様は非公開のため、詳細は確認できていません。公開されている情報の範囲では、実績が全く無い状態の商品が、実績を積んだ競合と同じ土俵で上位表示されることは想定しにくい、という理解にとどめておくのが実務上は安全です。

この構造を前提にすると、「実績がないから売れない、売れないから実績がつかない」という循環は、努力不足の結果ではなく、最初から織り込んでおくべき設計上の課題だとわかります。次に必要なのは、この循環をどこから断ち切るかという具体的な手順です。

大きなキーワードでなく、勝負する場所を先にずらします

新規商品の担当者が最初にやりがちなのが、その商品カテゴリで最も検索されている大きなキーワードに、いきなり照準を合わせることです。しかし検索ボリュームの大きいキーワードほど、すでに実績を積んだ競合が上位を占めているため、実績ゼロの新規商品がそこに割って入るのは難易度が高くなります。

初速づくりの段階では、検索ボリュームが小さくても、競合となる商品が少ない具体的なキーワードに、意図的に照準をずらしておく考え方が有効です。検索する人数は少なくても、競合が薄い分だけ相対的に見つけてもらいやすくなり、そこで生まれた実績が次の一歩の土台になります。大きなキーワードへの展開は、実績が積み上がった後の段階に回す、という順番の設計です。

なお、キーワードをどこまで網羅的に設計するかという方法論そのものは、また別の論点になります。ここでは「実績ゼロの期間だけは、勝負する場所を意図的に絞る」という初速期特有の判断に絞って触れています。

最初の数十件を、どこから連れてくるか

検索経由の流入だけに頼らず、最初の数十件を検索の外から連れてくる設計も欠かせません。規約の範囲内でできる主な選択肢を整理します。

  • 既存顧客への案内。すでに取引のある顧客に対して、メールマガジンやLINE公式アカウントなどモール外の手段で新商品を案内する方法です。検索順位に依存せず、確実に一定数の閲覧を作れます。
  • 既存の売れ筋商品からの回遊。売れ筋商品のページや同梱提案から、新規商品への導線を作る方法です。すでに実績のある商品が持つ流入を、新規商品に分け与える形になります。
  • 指名検索の下地づくり。SNSやモール外の発信で商品名やブランド名を認知してもらい、モール内で商品名そのものを検索してもらう流れを作る方法です。
  • 広告の限定的な活用。検索広告や商品一覧の広告枠を使い、露出そのものを作る方法です。この段階の広告費は、通常運用とは別の基準で見ておく必要があります。詳しくは次の項で触れます。

一方で、レビューの見返りを条件にした依頼や、自作自演によるレビュー投稿など、各モールの利用規約で禁止されている手法は選択肢に含めません。規約は改定されることがあるため、実施前には必ず出店先モールの最新の公式規約を確認してください。

初速期の広告費は「実績づくりの経費」として別枠で見ます

新規商品の露出を作るために広告を使う場合、注意したいのは評価の基準です。通常運用中の商品であれば、広告費用対効果を基準に継続や停止を判断しますが、実績ゼロの新規商品にいきなり同じ基準を当てはめると、初速がつく前に「割に合わない」と判断されて広告が止まり、露出そのものが作れなくなってしまいます。

そこで有効なのが、初速づくりの期間だけ、広告費を「実績を作るための経費」として別枠で扱う考え方です。ただし別枠にするからといって際限なく使ってよいわけではありません。あらかじめ「何週間まで」「上限いくらまで」という期間と金額の上限を先に決めておき、その範囲の中で運用する形にします。期限と上限を先に固定しておくことで、投じた費用が積み上がった後に判断が甘くなる事態を防げます。

この別枠運用は、広告費を恒常的に膨らませることを意味しません。あくまで実績がゼロの期間に限定した、期限つきの投資として扱う点が前提になります。

「立ち上げる/見送る」を、いつ・何で判断するか

初速づくりでもう一つ重要なのが、「この商品は立ち上がった」あるいは「これ以上は見送る」という判断を、いつ・何を根拠に下すかを、始める前に決めておくことです。走らせてみてから感覚で判断すると、思い入れのある商品ほど撤退の判断が遅れがちになります。

具体的には、観察する期間(何週間分のデータを見るか)と、確認する指標(閲覧数の推移、カート投入率、注文件数など)を、商品登録の時点で先に決めておきます。数値の目安は商品や価格帯によって変わるため、ここで一律の基準を示すことはできませんが、「何を、いつまで見て、誰が判断するか」を事前に文書化しておくこと自体が、初速設計の中核になります。

この工程は、AIやツールに任せる部分と、人が判断する部分を分けて考えると運用しやすくなります。

  • AIやツールに任せやすい部分。決めておいた観察期間の経過を検知すること、閲覧数やカート投入率などの指標を毎日自動で記録すること、あらかじめ決めた基準に達しているかどうかを機械的に照合して知らせることです。
  • 人が判断する部分。数値をどう解釈し、続けるか見送るかを決めること、価格や訴求するキーワードをどう軌道修正するか決めること、広告予算を追加するかどうかを資金繰り全体の中で判断することです。

集計と検知は仕組みに任せ、意思決定そのものは人が引き取る、という役割分担にしておくと、判断の先送りを防ぎながら、重要な判断を機械任せにしすぎるリスクも避けられます。

新規商品を一度に何点も出さない理由

新商品を複数点まとめて登録したくなる場面は多くありますが、初速づくりの観点では慎重になった方がよい判断です。一つひとつの商品に対して、既存顧客への案内や広告予算、観察の手間を十分にかけられなければ、どの商品も実績が中途半端なまま埋もれてしまい、何が効いて何が効かなかったのかを見極めにくくなります。

登録する商品点数を絞り、1点あたりに割ける観察と対応の密度を上げた方が、初速がついたかどうかの判断精度も上がります。そして、うまくいった施策・いかなかった施策を「初速ログ」のような形で記録に残しておくと、次に登録する商品の初速設計に転用できます。どのキーワードで初速がついたか、どの導線からの流入が効いたか、広告費はどの水準で見送ったかといった記録は、次の商品では最初から前提として使えます。同じ試行錯誤を毎回ゼロからやり直さずに済むことが、この記録の一番の価値です。