「キーワードを増やせば売れる」という勘違いはどこから来るのか

キーワードを増やすほど検索に強くなる、という発想にはルーツがあります。Googleの初期SEOで「キーワード密度」が重要視されていた時代の考え方が、そのままEC運営にも持ち込まれてきたためです。同じ語をページ内に多く出すほど評価が上がる、という前提が今も残っています。

しかしAmazonの検索では、この前提が成り立ちません。索引(インデックス)は、あるキーワードが商品ページに1回出現すれば、そのクエリに対して商品を候補として登録します。同じ語が3回・5回・10回出てきても、索引への登録は1回で完了しています。繰り返しによる加点がAmazonのA9で公式に採用されているとは確認されていません。

つまり「キーワード密度を高める」という作業は、すでに索引済みのクエリを重複して書き直しているだけになりえます。タイトルが読みにくくなるリスクを取りながら、関連性スコアは実質的に変わらない——これが密度信仰の引き起こす典型的な結果です。

A9アルゴリズムが評価する3軸と、関連性の位置づけ

前提として、A9アルゴリズムが検索順位を決める際に重視している軸を整理します。Amazonが公式に全仕様を公開しているわけではないため、ここでは一般に広く知られ、運用上の整合性も取れているとされる3軸の理解から始めます。

  • 関連性:検索クエリと商品情報が意味的に一致しているか。タイトル・重要キーワード欄(バックエンドキーワード)・商品説明や箇条書きといった各フィールドが、どのクエリに反応するかを索引化しています。
  • パフォーマンス:クリック率・コンバージョン率・売上実績。売れている商品ほど上位に出やすいという正のフィードバック構造がここにあります。
  • 顧客満足度:レビュー評価・返品率・配送の信頼性など、購入後の体験。

この3軸のうち、出品者が商品ページの作り込みで直接操作できるのは主に「関連性」です。パフォーマンスと顧客満足度は運用と商品品質の積み上げで改善されるもので、即効性は限られます。だからこそ、まず関連性の設計精度を上げることが最初の改善ポイントになります。

フィールドによって評価の重みは変わる

各フィールドには重みの差があります。一般に、タイトルに含まれるキーワードが最も評価が強く、重要キーワード欄(バックエンドキーワード)がその次、商品説明や箇条書きはさらに低いとされています。どのフィールドに配置するかは、単に「書く場所」の問題ではなく、そのクエリをどの強さでアピールするかの意思決定になります。

「密度」より「網羅性」——A9が本当に見ているもの

ここで最も大切な考え方を整理します。増やすべきは「同一語の出現回数」ではなく「クエリのバリエーション」です。

買い手は同じ商品を探すときでも、さまざまな言葉で検索します。たとえば保温ボトルを探す人が「ステンレスボトル 500ml」と打つこともあれば、「水筒 保温 ストロー付き」と打つこともあります。前者でインデックスされていても、後者のクエリをカバーできていなければ、その検索結果には表示されません。

網羅性とは、こうした「買い手が実際に打ちうるクエリのバリエーションを、どれだけ自社の商品ページに取り込めているか」を指します。同一語の反復回数ではなく、カバーしているクエリの種類と深さが関連性を左右する——これが運用上の実態です。

競合の関連キーワードを取得し、差分をスプレッドシートで可視化するフロー

「どのクエリを追加すべきか」を考えるとき、最も実態に近い情報源は競合商品です。同カテゴリで上位表示されている商品は、A9がそのカテゴリで評価するクエリを多数カバーしている可能性が高いためです。以下は、relmeaが運用フローとして使っているステップの概略です。外部ツールやGASと組み合わせて自動化していますが、手動でも再現できるステップを中心に記載します。

ステップ1:競合商品のASINを特定する

自社商品と同じカテゴリで、検索1〜3ページ目に安定して表示されている競合商品を5〜10件ピックアップします。サードパーティツールや、Amazonの「お客様はこんな商品も検索しています」を参考にできます。ツールを使わない場合は、検索画面で手動確認してASINをメモするだけでも十分です。

ステップ2:各ASINの関連キーワードを収集する

収集方法はいくつかあります。状況に合うものを選びます。

  • サードパーティツールを使う:競合ASINを入力すると、そのASINが上位表示されている検索クエリ一覧をCSVでエクスポートできます。月額ツール費用はかかりますが、数百〜数千件のクエリを数分で取得できます。
  • 手動で確認する:Amazonのオートコンプリート(検索窓のサジェスト)と、競合商品ページの「よく一緒に購入されている商品」「関連商品」を目視で確認します。工数はかかりますが、費用ゼロで30〜50クエリ程度は集められます。
  • Advertising APIを活用する:スポンサープロダクトの「ターゲティングサジェスト」APIで、指定ASINに関連するキーワード候補をJSONで取得できます。利用にはAmazon Advertising APIへのアクセス申請が必要です。relmeaではこの方法をGASと組み合わせて半自動化していますが、申請要件は変わることがあるため最新の利用規約を必ず確認してください。

ステップ3:自社商品ページの現状キーワードを洗い出す

自社のタイトル・重要キーワード欄(バックエンド)・商品説明・箇条書きに含まれるキーワードをすべて書き出します。セラーセントラルの商品編集画面で確認し、CSVかスプレッドシートに貼り付けます。

ステップ4:スプレッドシートで差分を可視化する

ここが核心です。スプレッドシートを1枚用意し、次の列構成にします。

  • キーワード:競合から収集した全クエリを縦に並べる。
  • 競合カバー数:そのクエリを持っている競合が何社あるか(多いほど重要度が高い)。
  • 自社カバー:自社ページにそのクエリが含まれているか(YES / NO)。
  • 配置フィールド:含まれている場合、タイトル・バックエンド・説明文のどこにあるか。

VLOOKUP または COUNTIF で自社キーワードリストと突合すると、「競合5社中4社がカバーしているが自社は未カバー」のクエリが浮き上がります。これが最優先で追加すべき候補です。relmeaの運用では、競合10社・クエリ数500件規模でこのシートを作ったとき、自社が未カバーだったクエリが全体の30〜40%程度(概算)という結果になることが多くあります。これは「タイトルにキーワードを詰めていた」ページでも変わりません。詰め込みは密度を上げてもクエリのバリエーションを広げないため、カバー率が改善されないのです。

差分データから自社ページをどう直すか

差分が見えたら、優先順位をつけて反映します。すべてを一度に直すと変更箇所が増え、効果の検証がしにくくなります。まず「競合カバー数が高く、自社が未カバー」のクエリを上位15〜20件に絞り、重要度の高い順に配置先を決めます。

タイトルへ入れるか

タイトルは最も評価が強いフィールドですが、文字数制限と可読性のトレードオフがあります。検索ボリュームが高く、商品の中心的な特徴を表すクエリをここに追加します。すでに文字数上限に近い場合は、既存キーワードのうちカバー済みの語と重複している部分を削り、未カバーのクエリに差し替えます。

重要キーワード欄(バックエンド)へ入れるか

バックエンドキーワードはユーザーに表示されないため、可読性を気にせずクエリを列挙できます。タイトルに入れた語をここで繰り返す必要はありません。タイトルに収まらなかったクエリ・スペル揺れ・英語表記などを集約するのが効率的です。文字数制限(一般に250バイトが目安とされますが、公式仕様は変わることがあるため最新のセラーセントラルヘルプを確認してください)を超えた分は無効になります。

商品説明・箇条書きへ入れるか

ここは評価の重みが低いため、SEO目的で詰め込む優先度は高くありません。むしろ購入前の買い手が読む文章として、コンバージョンに貢献する情報を書く場所と考えます。商品の用途・特徴に関連するクエリが自然に含まれる形であれば問題ありません。

変更後は少なくとも2〜4週間の安定期間を置いてから、検索順位とCVRの変動を確認します。Amazonのアルゴリズムは反映に時間がかかることが多く、即日で変化が表れるわけではありません。急いで再変更せず、データが蓄積されてから判断します。

小さく始めて広げる——はじめる順番

競合キーワードの収集と差分可視化は、規模が大きくなるほど効果が高まりますが、最初から全商品・全競合を対象にする必要はありません。relmeaがおすすめしているのは、次の順番です。

  1. まず1商品・競合3社・クエリ数100件程度でフローを回す。シート構成と差分確認の手順がわかれば、次からは商品を変えてコピーで対応できます。
  2. 売上構成比が高い主力商品に絞って深く掘る。主力でカバー率が上がると、露出増がそのまま売上に直結しやすくなります。手応えを確認してからロングテール・季節商品へ広げます。
  3. 差分確認を定期化する。競合のタイトル・キーワードは常に変わるため、主力商品は月1回程度シートを更新し、追加すべきクエリを見直します。

「キーワードを増やした」という作業量の感覚ではなく、「どのクエリが新たにカバーされたか」という網羅性の変化で進捗を測る。これがAmazon SEOを改善するときの、正しい問いの立て方です。