販売ページの実績数字は、なぜ実測からずれるのか
実績の数字がずれる原因は、嘘をつく意図よりも、数字の出どころが追えなくなる構造にあります。よくある経路は次のとおりです。
- 最初に書いた概算が、そのまま残る
- 別々の月の数字を、頭の中で足してしまう
- 「見込み」や「試算」のつもりで書いた数字が、いつの間にか「実績」として読まれている
- 売上管理画面の数字は更新されても、販売ページ側の数字は古いまま
教材や記事の本文をAIに書かせる場合は、もう1つ経路が加わります。実際のログや台帳を入力として渡さず、テーマだけを渡すと、もっともらしい数字が文章の流れで出てきます。
買った人は書き手の管理画面を見られません。そのため、ずれは外から指摘されるまで残ります。
景品表示法の「合理的な根拠」との関係
景品表示法には不実証広告規制があります。消費者庁が求めたときに、期間内に合理的な根拠を示す資料を出せなければ、優良誤認表示とみなされる仕組みです。販売ページの実績数字が根拠資料で裏づけられるかどうかは、この規制に関わり得る論点です。個別の判断は専門家に確認してください。
実務に落とすと、「あとから根拠を示せる状態」にしておくことが、販売ページの数字に求められます。
relmeaの教材で実際に起きたこと
星2つのレビューが付いた
2026年8月20日ごろ、relmeaが販売しているAIチーム構築の教材に、星2つのレビューが付きました。文言は「それっぽいことを書いているがエアプ感を感じる」です。
原因を調べると、教材本文をテーマだけでAIに書かせ、実ログや実台帳を入力に渡していなかったことが分かりました。その結果、次の4つが同時に起きていました。
- 具体例が、誰にでも当てはまる一般例になっていた。実際のログから引いていなかった
- 数字が実測と合っていなかった。月の売上増分 ¥192,000 の内訳4項目のうち、3項目が手元の実測記録と矛盾していた
- 検算されていない文が残っていた。「月¥2,300 = 年¥27,600 の漏れ … 時給ベース ¥27,600/h」という文で、年額の金額を時給の単位で書いており、計算として成り立っていない
- 記事内の画像26枚がすべてAI生成のイラストで、実物のスクリーンショットは0枚だった
売上管理画面で全期間を数えた
2026年8月21日に、noteの売上管理画面から3アカウント分の全期間(2025年5月〜2026年8月)を数えました。3アカウント合計の累計は ¥177,000(手数料を引く前の売上金額)です。月ごとの合算は次のとおりでした。
- 2025年5月 ¥400/6月 ¥3,400/7月 ¥5,200/8月 ¥10,700
- 2025年9月 ¥10,900/10月 ¥11,780/11月 ¥17,900/12月 ¥12,300
- 2026年1月 ¥7,100/2月 ¥9,900/3月 ¥8,700/4月 ¥10,560
- 2026年5月 ¥22,020(最高)/6月 ¥20,260/7月 ¥12,760/8月 ¥13,120(数えた時点で進行中の月)
16か月分を足すと ¥177,000 になり、累計と一致します。
教材の数字と突き合わせた結果
教材には「noteの月収 ¥1.2万 → ¥9.4万」と書かれていました。
- 起点の ¥1.2万は実在しました。2025年10月が ¥11,780、12月が ¥12,300 です
- 終点の ¥9.4万に当たる月は、全期間で1つもありませんでした。最高の ¥22,020 と比べても、¥9.4万はその約4.3倍です
「note 3アカウントの月収が +¥82,000」という記述も同じでした。実測で取れる最大の増加幅は、最高月 ¥22,020 と起点 ¥11,780 の差である +¥10,240 です。
¥9.4万がどこから来た数字なのか、記録は残っていませんでした。ここは推測で埋めず、「出所不明」として扱いました。
書き直した範囲
2026年8月22日に教材を書き直して公開しました。本文から取り除いた数字は次のとおりです。
- ROI 14倍
- 月116時間の削減
- 月 ¥54万のリターン
- noteの月収 ¥9.4万
- 実P/L(月 ¥44,600・失敗 ¥42,000)
- 値上げ表
本文は 44,606字から 27,800字になりました。サイト側も24ファイルで表記をそろえ、コラム1本にあった「実P/Lを公開している」という出典の表記も削除しました。数字そのものを直すだけでは足りず、その数字を引用していた周辺の文まで追う必要がありました。
売上管理画面と1行ずつ突き合わせる手順
relmeaで行った照合を手順にすると、次の5つになります。relmeaに物販での実績データはないため、モールの管理画面への当てはめは考え方としてお読みください。
手順1:販売ページから数字をすべて抜き出す
販売ページ、LP、記事、サイトの各ページから、金額・部数・件数・期間・倍率・時間の数字を抜き出して一覧にします。1行に数字を1つ、その数字が載っているページ、どういう意味で書いたかを並べます。「¥9.4万」だけでなく「noteの月収」という意味づけまで書いておくと、次の手順で比べる相手が決まります。
手順2:売上管理画面の該当する期間を開く
一覧の各行について、管理画面で該当する月・該当する商品を開き、実数を横に書きます。
- 「累計」と書いた数字は、全期間の合計と比べる
- 「月収」と書いた数字は、その月単位の数字と比べる
- 「最高」「ピーク」と書いた数字は、全期間の月次から最大値を探して比べる
手順3:一致・不一致・出所不明の3つに分ける
- 一致:管理画面の実数と同じ。いつ・どこで・どう数えたかを言える
- 不一致:比べる実数はあるが、書かれた数字と違う
- 出所不明:該当する月も記録も見つからず、どこから来たか説明できない
relmeaの例では、¥1.2万が一致、¥9.4万が出所不明、+¥82,000 が不一致(実測の最大は +¥10,240)でした。この手順でいちばん大事なのは、出所不明を「たぶんこの月の数字だろう」と推測で埋めないことです。
手順4:不一致は実数へ、出所不明は削除する
不一致は実数に書き直します。出所不明は、根拠が出てこない限り削除します。消した結果、文章が弱く見えることはあります。それでも判断の基準を「実数で言えるものだけ残す」に統一しておくと、あとから誰に聞かれても説明できます。
手順5:同じ事実が別の数字で書かれていないか確かめる
同じ事実が、別のページに別の数字で書かれていることがあります。relmeaでは表記をそろえる作業が24ファイルに及びました。一覧の段階で同じ意味の数字を並べ、1つに寄せます。
現金と換算を分けて書く
数字がずれるもう1つの原因は、現金と換算の混在です。
- 現金:入金として観測できるもの。売上管理画面や口座で確かめられる
- 換算:削減した時間×時給のように、計算で作った金額。入金として観測できるものではない
relmeaの教材にあった「月116時間の削減」「月 ¥54万のリターン」「ROI 14倍」は、いずれも入金として確かめられる現金の数字ではなく、実測でも裏づけられませんでした。そのため書き直しで取り除きました。いま決めているルールは次の3つです。
- ROIの分子には現金だけを入れる
- 換算の数字を書くときは「換算であり現金ではない」と明記し、現金の数字と同じ文に混ぜない
- 計算を含む文は、単位と桁を1つずつ検算する
先ほどの「月¥2,300 = 年¥27,600 … 時給ベース ¥27,600/h」は、検算を一度通していれば残らなかった文です。
再発を防ぐ固定ルール
書き直しと同時に、relmeaでは記事・教材・販売ページに共通する8つのルールを決めました。要約すると次のとおりです。
- 一次情報の実物(コマンドの出力、実ファイル、台帳の行、管理画面の実数、日付)を引用する。無ければ書かずに差し戻す
- 現金と換算を分ける。ROIの分子は現金だけにする
- 実績値は「どこで・いつ・どう数えたか」を言える状態にする。公開するページでは、読者が辿れない社内資料の名前を出典に書かず、「自分の環境で数えた値です」のように値の性質を断る
- 計算を含む文は検算する
- 同じ事実に数字を2通り書かない
- 本数・部数は、書く直前に数え直す
- スクリーンショットは実物だけ。それらしい画面を生成して置かない
- 検証できない体感(「夜の30分が戻った」など)は書かない
書く直前に数え直す理由
部数の数え直しにも実例があります。2026年9月12日に、教材を販売しているBrainの売上管理画面を開くと、2026年の累計は ¥83,800・11部でした。月別は6月 ¥34,000、7月 ¥23,400、8月 ¥26,400、9月 ¥0(9月12日時点)で、足すと累計と一致します。
一方、それ以前の社内記録は「累計 ¥40,800・6部」「1巻目しか売れていない」のまま更新されていませんでした。7月以降に別の巻が3部売れていた事実が、判断に入っていなかったことになります。記録は更新されないまま残り、読む側はそれを最新だと思い込みます。数字を書く直前に管理画面で数え直すのは、このためです。
進行中の月を満了した月と並べない
月次の推移を載せるときは、進行中の月に注意が必要です。上の月次で、2026年8月の ¥13,120 は数えた時点で進行中の月でした。日数が足りない月を満了した月と同じ列に並べると、見かけの上で下降しているように見えます。販売ページに月次の推移を載せるなら、進行中の月は「進行中」と明記するか、載せないほうが誤解を生みません。
機械で確かめる部分と、人が判断する部分
照合には、機械に任せられる部分と任せられない部分があります。
機械に任せる部分
- 販売ページから数字を抜き出して一覧にすること
- 同じ意味の数字が、複数のページで食い違っていないかの検出
- 月次の合計が累計と一致するかの検算
- 計算を含む文の掛け算・割り算の再計算
人が判断する部分
- その数字が現金か換算か
- 出所不明の数字を消すか、実数に書き直すか
- 「自分の環境で数えた値」と断る必要があるかどうか
- 景品表示法の観点で、根拠資料として足りるか
AIに本文を書かせる場合は、実ログと実台帳を入力として渡すことが前提になります。テーマだけを渡して数字まで書かせると、今回のように「それっぽいがエアプ」と受け取られる文章になり得ます。
relmeaでは、辿れる数字だけを販売ページに残すことにしました。まずは自分の販売ページの数字を一覧にし、管理画面の実数と1行ずつ比べるところから始めてみてください。
